機械翻訳は人間翻訳よりも優れているの?両者の特徴を比較
テクノロジーの発展に伴い、機械翻訳の精度が高まっています。しかし、人間が行ってきた翻訳業務の良さもあるなかで、どちらの方が優れているのか気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、機械翻訳の歴史や翻訳の種類をピックアップし、優れている点を詳しく解説します。さらに、人間翻訳との比較を行っているので、翻訳業務でどちらを利用するか参考にしてください。
機械翻訳とは
そもそも、機械翻訳とは、コンピュータによって行われる自動翻訳のことです。たとえば、スマートフォンの専用アプリに、翻訳したい文章を入力することで、日本語から外国語、外国語から日本語、外国語から外国語に素早く翻訳できます。
また、機械翻訳は、コンピュータの進化やAI学習などの出現によって、日々翻訳精度が向上しています。機械翻訳が歩んできた歴史、3つの翻訳システムについて確認しましょう。
機械翻訳の歴史
機械翻訳の歴史は長く、1954年にアメリカ・ジョージタウン大学とIBM社が共同で開発した機械翻訳が始まりと言われています。実用的には程遠い初歩的なステージであるものの、60以上のロシア語の文章を英語に翻訳することに成功しました。
1960、70年代と機械翻訳開発が停滞したのち、1980年代に「ルールベース機械翻訳」や、「統計的機械翻訳(SMT)」と呼ばれる手法が誕生します。当時では画期的な開発であったものの、正確性に欠ける、費用対効果が悪いといった改善点も多く、まだまだ実用的な部分では追いつかないのが課題でした。
そして、機械翻訳の歴史が変わったのは、2010年代に入ってからです。計算能力を向上させるとともに、コンピュータが自動で機械学習を行う「ニューラル機械翻訳」という機械翻訳手法が誕生し、2010年代後半にGoogle、Microsoftといった世界を代表するIT企業で実用化され、現在に至ります。
機械翻訳の種類
長い機械翻訳の歴史のなかで、3つの翻訳システムが開発されました。それぞれのシステムの特徴を踏まえ、時代を追うごとにどのような変化を遂げていったのか調べてみましょう。
・ルールベース機械翻訳
・統計的機械翻訳(SMT)
・ニューラル機械翻訳
・ルールベース機械翻訳
ルールベース機械翻訳は、機械翻訳の歴史上、最も早く誕生したシステムです。ルールに基づき、過去に入力した文章や単語のデータを用いて、文章の翻訳を行います。当時のテクノロジーのレベルを踏まえると先進的な技術であったものの、特定の構文のみしか翻訳できず、実用化には至りませんでした。
・統計的機械翻訳(SMT)
ルールベース機械翻訳に続いて開発されたのが、統計的機械翻訳です。統計的機械翻訳は、膨大なテキスト情報をインプットさせ、アルゴリズムによって翻訳結果を導き出します。ルールベース機械翻訳に比べて、データ量が多く、さまざまな文章の翻訳を行える一方で、正確性に欠ける点が問題とされていました。
・ニューラル機械翻訳
ニューラル機械翻訳は、多くの翻訳ツールで導入されている機械翻訳システムです。ディープラーニングと呼ばれる機械自身が学習するシステムを採用しており、人間に近い思考力によって自然な文章の翻訳が行われます。Google翻訳にも使われている機械翻訳システムであり、実用性も高いのが特徴です。
機械翻訳が優れている点
機械翻訳は、時代を重ねるごとに発展し、高度な翻訳技術を有するようになりました。ビジネスシーンでも活用されることが多く、グローバルな社会のなかで欠かせないアイテムです。そこで、実際に、機械翻訳を使用するにあたり、どのような点が優れているのか確認しましょう。
翻訳スピード
機械翻訳が優れている点として、翻訳スピードが挙げられます。Google翻訳のように、翻訳したい文章を入力し、ボタンを押すだけで瞬時に多言語への翻訳が可能です。人間による翻訳は、原文を読む時間や、翻訳した文章を入力するなどの作業が発生するため、文字数が多くなるほど時間を要します。
対費用効果が高い
次に、機械翻訳は、対費用効果が高いです。たとえば、10,000字の日本語を英語に翻訳する場合、文字単価や文書内容にもよりますが、人間による翻訳だと3〜5万円ほどの費用が発生してしまいます。一方、無料の機械翻訳ソフトを使用すれば、10,000字の文章を翻訳しても、費用はかかりません。もちろん、有料の機械翻訳ソフトを利用すると費用がかかりますが、人間翻訳と比較し、大幅なコストカットが可能です。
マイナー言語への対応
3つ目は、機械翻訳では、マイナー言語への翻訳にも対応している点です。Google翻訳では、英語・中国語・フランス語といったメジャー言語はもちろん、アフリカで使われているスワヒリ語や、イボ語など全108言語(2021年現在)で翻訳を行えます。人間による翻訳は、言語スキルを有した人材が必要となるため、マイナー言語ほど対応が難しくなります。
人間にしかできない翻訳技術
実用的な部分でも発達している機械翻訳ですが、人間にしかできない翻訳技術も多く存在します。機械翻訳の技術と比較しながら、人間翻訳が優れている部分を解説します。
誤訳を防ぎやすい
1つ目は、誤訳を防ぎやすい点です。人間の脳に近い学習技術によって高度なレベルの翻訳が可能となった機械翻訳ですが、細かい部分での精度に欠けます。ネイティブでしか使わないような表現や、日本語特有の敬語などを正確に反映することはまだまだ難しく、複雑な文章に対しては誤訳が発生するケースもあります。
一方、人間による翻訳は、機械翻訳で表現が難しい点まで、細かく翻訳することができます。複数回によるチェックも行っているため、可能な限り誤訳を防げるのもメリットです。比較的重要度の低い文章の翻訳であれば、機械翻訳でも問題ありませんが、契約書類の翻訳や、コーポレートサイトの多言語化などは、誤訳を防げる人間翻訳が適しています。
シーンに適した翻訳を行える
また、人間による翻訳では、各シチュエーションに応じて適切な翻訳が可能です。機械翻訳は、文章に対して直訳感が出てしまうため、意味が通りにくい翻訳結果となることが多くあります。
たとえば、映画の翻訳では、テキスト情報だけでなく映像の内容を見た上で、シーンに適した翻訳を行います。直訳ではなく、雰囲気も加味しながら相手に理解しやすい表現を生み出せるテクニックは、人間にしかできません。
専門性の高い翻訳が可能
人間による翻訳は、機械学習が表現できないような専門性の高い文章の翻訳も可能です。最新テクノロジーの単語や、医療単語など高い正確性が求められる分野などでは、AIといえども正しい翻訳を行えない可能性も考えられます。とくに、説明書や仕様書を翻訳する際には、専門用語を十分に解釈していないと相手に伝わる文章作成が難しくなるため、人間翻訳に優位性があります。
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まとめ
テクノロジーの発展と同時に、機械翻訳の精度も年々高くなっています。スピード・コスト・マイナー言語への対応といった点に優れており、個人的な利用から、ちょっとした文書の翻訳まで活用可能です。
しかし、人間にしかできない翻訳技術も存在します。機械翻訳では難しい表現の翻訳や、相手にとって最適な翻訳を行えるなど、人間翻訳の優位性も多くあります。また、人と人のコミュニケーションでは、人による通訳も必要です。
どちらか1つだけに頼るのではなく、機械翻訳と人間による翻訳を使い分け、それぞれの良さを活かせるようにしましょう。