プロフェッショナル通訳者はどのように難民問題に貢献できるか
欧州における難民危機が始まってからすでに4年が経過しています。過去3年間においてEU諸国における亡命申請は350万件を超えています。これは難民を受け入れるヨーロッパ諸国と入国を希望する難民の両方にとって大きな課題です。
これらの課題を乗り越えるために不可欠な要素が適切な通訳者です。戦争、貧困、不安定から逃れた難民は自分自身で将来のかじ取りしなければならない現実に直面します。新しい文化や言語に直面している環境において、馴染みがないシステムとやり取りするときには難しい問題が予想されます。公務員、専門家、地域社会におけるコミュニケーション上の問題や誤解が日常的に起きることが予想されます。
通訳者は予想される問題を解決するためにさまざまな方法で貢献します。例としては、難民の権利保護、医療サービス利用の支援、新しく来た難民の新居への定着支援、地域への受け入れ支援などがあります。通訳者は貴重な役割を果たします。しかし入国した国および難民を受け入れた国々の両方で通訳者は不足しています。多くの場合、地域の通訳者がこの不足分をうめます。これらの地域における通訳者は貴重なリソースです。しかしプロフェッショナル通訳としての訓練と経験が不足しています。また倫理や難民を通訳する際の基本原則を知らない可能性があります。
この投稿では現在起きている難民危機において必要とされている支援をプロフェッショナル通訳者がどのように提供するかを見ていきます。
ギリシャとイタリアの入国ポイントにおける支援
人道的な通訳はギリシャとイタリアに位置する難民の「ホットスポット」でますます急務となっています。ホットスポットを経由して新しい難民が地中海を通ってヨーロッパ諸国に流入してきます。Translators Without Bordersは2017年に250人近くの難民、移民、人道支援活動者を対象とした調査を実施しました。これは4万人以上の難民が居住しているギリシャでの調査です。そこでは効果がある通訳サービスが足りないために人道的な救援活動に障害が起きているということが明らかになりました。
ギリシャ語、イタリア語(あるいは英語)そして難民が話す言語を通訳できるプロフェッショナル通訳者が必要です。難民キャンプ内で一般的に使用している言語は、アラビア語、ペルシア語、ダリ語、ウルドゥー語、パシュトゥー語、クルド語です。TWBの報告書は口頭ベースの通訳者が必要とされていることを明らかにしました。これは難民回答者の約半分は、自分たちの言語を文章で理解する能力に限界があったためです。しかし同時に書類の翻訳も必要です。
通訳者は、難民が「情報の欠如」を解消するために進むべき方向を示します。関係機関や当局と連絡を取りコミュニケーションを円滑にします。難民は自分たちが有する権利を理解、認識できるでしょう。また通訳者は重要な文書を翻訳します。そして難民の声を代弁して、健康問題から犯罪の報告に至るまであらゆる問題に対応して行動します。難民が適切な医療、食糧、宿泊施設を確保できるようにします。通訳者はさらに依頼者に代わって電話をかける、書類を記入するなど、支援者としての役割を果たします。
プロフェッショナル通訳が効果的なサポートを提供している国では様々なプロジェクトが実施されています。研究後に、Translators Without Bordersは、Interpreter Connectと呼ばれるサービスを開始しました。このサービスは、人道支援における通訳者を、通訳を必要としている非営利団体に結びつけます。TWBはまたWords of Reliefと呼ばれるスキームを導入しました。このスキームは通訳者の不足を解消するためのトレーニングを提供し、様々なリソースやツールを提供します。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は国連における難民を担当する機関です。UNHCRは、ギリシャの欧州亡命支援局(EASO)に通訳を提供するとともに、ヨーロッパ各国で支援を提供出来るよう働きかけをしています。UNCHR所属の通訳者は、難民とギリシャ当局との間で連携を取ります。難民が権利と選択肢を理解できるようにします。また亡命申請プロセスに申し込むことを支援します。地域での仕事を希望する通訳者には別の選択肢があります。ギリシャの難民キャンプにいる人々を集めて表現する機会を与える言語プロジェクトがあります。
ヨーロッパおよびその他の受け入れ国に対する支援
欧州に到着した難民の多くは、各国に分散します。これらの国は難民を引き受けますが、一部の国は他の国よりも多く難民を受け入れます。EU / EFTAの2016年における数字を見ると亡命申請件数が最も多い国はドイツです。次いでイタリア、フランス、ギリシャ、オーストリア、英国が続きます。これらは、通訳者によるサポートが必要といえるヨーロッパ諸国といえます。しかし受け入れが少ない国であっても、必要とされる言語における通訳者が絶対的に不足しているようであれば当然通訳の手助けが必須です。
通訳者は、亡命希望者や難民が移住する際に次のような方法で新しい国における支援活動を手助けできます。
難民が権利を確保できるよう支援します。
新しい国に定住する際には様々な問題が予想されます。難民が自分たちの権利を確実に確保できることがこれらの問題に対応するための基本条件です。しかしそれは必ずしも単純なプロセスではありません。プロフェッショナル通訳の支援がない状況では、難民は移住先の法律システムにとまどい、自分たちの状況について確認するすべがなくなるでしょう。移民と亡命の手続きは国によって異なります。しかし手続きはかなり複雑です。そのためその国における言語や慣習について知識がない人は手助けが不可欠です。
通訳者は、重要な一連の手続きを通して支援します。まず亡命申請手続きを支援します。手順や予期される期間を説明します。次に手続きに関する当局の決定を説明します。依頼者が公正な審理を受けられるようにします。また申請が却下された場合には上告を支援します。プロセス全体を通してある一定の範囲で精神面からもサポートします。
解決すべき問題への対処を支援します。
慣れない環境で四苦八苦している難民は、通常必要な支援を得られません。そのため日常的に様々な問題に直面します。プロフェッショナル通訳は、重要度の低い日常問題をいつも支援するわけではありません。しかし支援が必要になる状況はあります。例えば、難民が犯罪の被害者になった場合です。犯罪を報告することは、言葉の壁のために現実的に困難です。さらに難民は、警察官におびえるかもしれません。自国の警察官から過酷な扱いを受けていた場合にはこの傾向が特にあります。名乗り出て当局に連絡を取る際には支援が必要です。
難民が共通で抱えるもう一つの問題は、母国から海外へ移住する過程で生じる心的外傷とストレスです。通訳者は、話をしたり問題を安心して伝えられたりする信頼できる人になりえます。また必要に応じ専門的なサポートを見つけ出すことで、このような精神的問題に対処できます。しかし、研究は、このような環境下で過度に負担がかからないように、通訳者自身が適切な心理的支援を得ることが重要であると示しています。
難民がサービスを利用できるよう支援する
通訳者は、難民が利用可能なサービスに申し込む際に重要な役割を果たします。難民はこれらの利用可能なサービスについて存在に気づいていないか、あるいは知っていても申請方法がわからない可能性があります。このようなサービスには住居や福祉サービスが含まれます。最も重要なのは医療サービスです。難民は、はしか、下痢、呼吸器感染症、栄養失調などの病気により死亡率が高いにもかかわらず、医療サービスを利用する際に様々な困難に直面します。新しい国に到着した際には、難民は深刻な身体的または精神的疾患のために緊急の医療を必要とすることがあります。
プロフェッショナル通訳の存在は、医療サービスの利用を支援するだけではありません。誤解に基づく誤診や治療ミスにつながる可能性を減らします。また治療に際し医師が確実にインフォームドコンセントを患者に与えることを保証します。これにより依頼者の健康リテラシーを改善します
定住と地域への統合を支援する
法的手続きや公共サービスへの申請とは別の課題があります。難民は新しい環境に適応し、新しいコミュニティに定着する必要があります。これは時間がかかるプロセスです。通訳者は、ここでも有益な援助を難民に提供します。例えば難民が新しい文化や習慣について学ぶことを支援します。また既存のコミュニティが新しい難民移住者をよりよく理解することを促進し、難民を受け入れるよう手助けします。
通訳者は、用意されている機会を最大限に利用できるよう支援します。難民が過去の経験を最大限に活用できるようにします。通訳者は難民と受け入れ国における両方の文化的規範を理解しています。起こり得る文化的摩擦を減らせるでしょう。また、通訳者は難民の言語スキルを向上させます。通訳者がもつスキルや支援を必要としなくなった時に、難民は新しい環境における地位を確立したといえます。
難民組織
難民支援のための国際機関の一覧はこちらをご覧ください。
難民支援のための欧州組織の一覧はこちらをご覧ください。
難民支援のためのアメリカの団体の一覧は、こちらをご覧ください。
Oyraa、あなたにプロフェッショナル通訳を提供します。